12月, 2019年

在職老齢年金改定で得する人は?

2019-12-27

60歳代前半は限られた層が増額の対象に

 政府は年金制度改革の一環で在職老齢年金制度の見直し案をまとめました。改正内容は今まで総報酬月額相当額(月の賃金等)+老齢厚生年金の受給額28万円以上の方が減額されていたのを、60代後半の方と同じ47万円を超えたときに超えた額の2分の1減額に変更されることになります。
当初の改正案では働く60代前半の方を年金減額対象としにくくするのが目的でしたが、実際は限られた生年月日の方だけが何らかの恩恵を受けられる案になりました。制度改正が2021年4月からだとするとその年に60歳代前半で年金受給できる、男性の場合昭和31年4月2日~36年4月1日生まれの方が増額にあずかれることになるからです(女性では昭和31年4月2日~41年4月1日生まれの方)。
昭和36年4月2日以降生まれは60歳台になっても65歳まで年金は支給されない世代であり対象になりません。

65歳からの在職老齢年金は?

 60歳代後半の方の在職老齢年金の基準収入は47万円で据え置きの予定です。今まで厚生年金をもらいながら働き続けると年金額は毎月増えるのではなく節目の年齢で再計算されて増額されていました。69歳までは65歳時に計算した額でいきます。70歳になった時点でもう一度再計算されて増額されていました。途中で退職したら加入期間で増えた分を計算し退職の翌月から増額されました。見直し案では65歳以降には毎年1回計算し直して年金が年々増えていく「在職定時改定」制度を導入する方向で2022年改定を目指しています。
 これにより年800億円くらい給付が増える見通しですが、働けるうちは働こうとする人を後押しするとともに、働き続けることで年金増額を早く実感することができるとしています。

いくらくらい増えるの?

 65歳以降厚生年金に加入して1年間働くといくらくらい年金が増えるかという試算を見ると報酬月額が20万円で月1,100円、年で13,200円になります。30万円なら年約2万円になります。
 年金は受給開始年齢を65歳から1か月遅らせるごとに0.7%増額される繰り下げの仕組みもあります。70歳まで繰り下げると42%の増額です。継続就労するならこちらも検討されるのがいいでしょう。

高年齢雇用継続給付金の行方 ~2025年度から段階的廃止を検討~

2019-12-26

高年齢雇用継続給付金とは?

2019年12月6日の日本経済新聞に「60~64歳の賃金穴埋め給付、段階的廃止へ 厚労省」という記事が掲載されました。
厚生労働省は、2020年の通常国会に雇用保険法改正案を提出し、2025年度から段階的廃止の方向で検討しているようです。
現在、企業が定年年齢を設定する場合、60歳以上とされ、定年後も希望する労働者には65歳到達までの継続雇用(再雇用含む)が義務づけられていますが、再雇用後の賃金は、定年前に比べて低下するのが一般的です。
 そこで、雇用保険の被保険者期間が5年以上の労働者が、原則60歳時点の賃金の75%未満に低下した場合、60歳から65歳到達までの間、賃金の低下率に応じて、雇用保険から高年齢雇用継続給付金が給付(61%以下で最大支給率15%)されます。 
なお、支給対象月の賃金の額が363,359円以上(2019年8月以降)の場合は、支給されません。

高年齢雇用継続給付金廃止による影響は?

 従来、高年齢雇用継続給付金は、定年再雇用者の年金支給開始までの賃金低下を補うものとして活用されてきましたが、廃止による影響が懸念されます。
 高年齢雇用継続給付金が廃止されれば、労働者の実質的な手取額が減少しますので、企業は賃金増で補うか否かの判断を迫られます。
企業が補う場合、高年齢労働者のモチベーション維持には貢献しますが、人件費が増加して、経営に影響を与えかねません。
逆に、企業が補わない場合、高年齢労働者のモチベーションが低下する恐れがあり、高齢者雇用を積極的に推進してきたこれまでの経緯と矛盾することになりかねません。
国にとっては、雇用保険給付が減少する財政上のメリットが大きいでしょうが、企業にとってのメリットは、毎月の給付金申請手続きがなくなり、事務作業量が減少する程度ではないでしょうか。
高齢者を多数雇用している企業ほど影響が大きいので、今後の動向に注意しながら、対策の検討が必要になりそうです。

人材確保と流出防止のため 仕事と介護の両立支援を

2019-12-25

あなたの会社にサンドイッチ世代は何人?

 サンドイッチ世代とは、子育てと親の世話を同時に行っている世代のことです。40代、50代という企業の中核を担う世代でありながら、育児と介護の負担によって仕事と両立できず離職してしまう……そんなリスクをもった世代ともいえます。近年では女性だけではなく男性の介護離職の割合が高まっており、この離職防止のための両立支援を重要視する企業が増えています。

育児と介護の支援は同じ??

仕事との両立支援として、育児と介護は同様に重要な観点ですが、その内容は大きく異なります。例えば、育児は準備期間があり子供が成長すれば一定の区切りがつきますが、介護はある日突然で、どのぐらいの期間続くのか見通しがつかない場合がほとんどでしょう。一方で、介護は育児よりも日々の時間的な制約が緩やかともいわれています。介護の現状は多様であり、育児と同じ施策のラインナップでは十分とはいえず、従業員の状況を把握したうえでの施策の検討が必要です。
 では、どのような支援策があるのでしょうか。

中小企業に特化した助成金の活用

 従業員には、93日間の介護休業があります。この休業期間は、介護のためだけではなく、働きながら介護できる体制作りのための期間でもあり、必要なタイミングで取得できるよう3回まで分割が可能です。介護休暇制度や介護休業中に受けられる介護休業給付金(休業開始前賃金の67%相当)もあります。
企業に対しては、「介護離職防止支援助成金」の制度があり、今年度は中小企業に特化し、支給上限を拡大する改正が行われました。具体的には、「介護支援プラン」を策定したうえで、例えば、従業員が介護休業を取得する、あるいは新たに介護のための制度(フレックスタイム制度や労働時間短縮制度など)を導入、活用するなどの要件を満たすと、36万円(1年度5人以内)までの助成金が受けられます。(制度詳細は⇒https://www.mhlw.go.jp/content/000527589.pdf)

部下とのコミュニケーションのススメ

2019-12-25

部下との面談で何を話しますか?

 あなたの事業所で、管理職と部下のコミュニケーションの場は、どれぐらいあるでしょうか。目標管理面談にキャリア面談、最近では1on1ミーティングも注目されています。組織活性化のため、従業員のモチベーション向上のため、上司と部下の縦のラインのコミュニケーションは重要です。しかし、評価など目的が明確な面談はまだしも、中長期的なキャリア形成や育成のための面談となると「一体なにを話したら?」「こちらは一生懸命でも部下の口が重い…」といった悩みを抱える管理職もいるのではないでしょうか。そんな時のために、「4つのL」をご紹介します。

ハンセンの「4L」とは?

ミネソタ大学のサニー・ハンセンは、キャリアを仕事だけではなく人生全体で捉える「統合的人生設計」を提唱しましたが、その考え方の1つに「4L」があります。これは「愛(Love)」「労働(Labor)」「学習(Learning)」「余暇(Leisure)」のことで、人生における役割を表現したものです。この4Lを円グラフにして、「今の自分」と「理想の自分」の2つを書いてもらうと、そのバランスは人によって、あるいは同じ人でも人生のタイミングによって、大きく異なってくるでしょう。そして、「そこにギャップがあるのか」「それを理想の形に近づけるにはどうしたら?」ということを考え、言葉にしてもらいます。
これによって、改めて自分自身への気づきがおこるとともに、仕事への向き合い方、今後のキャリアの積み上げ方について考えを深めていくことができ、モチベーションの向上にもつながっていきます。
 この時大切なことは、この4Lに対して、上司が批評や指導をすることは、絶対に避けなければなりません。これは、部下自身が「自分にとって仕事とは何か?」を改めて考えるためのきっかけにするものです。上司に必要なのは、部下が考えを自律的に進めていけるよう、相手を肯定しながら積極的に聴く傾聴の姿勢で、4Ⅼの内容にこだわる必要はありません。
「4つのLって知ってる?」そんな言葉が社内で聞かれるようになったら、ちょっと会社の雰囲気も変わってくるかもしれませ

補助金・助成金を賢く使って 会社の力に!

2019-12-19

補助金と助成金の基本的な違い

企業が受ける補助金や助成金は企業運営にとって、資金調達手段として欠かせないものですが、補助金と助成金は違いがあります。

① 給付金の出どころの違い

補助金と助成金はお金の出どころが違います。補助金は経済産業省・中小企業庁が実施する国庫からの給付金ですが、助成金はそれ以外の省庁や自治体等が実施する給付金で、よく耳にするのは厚労省の雇用関連の助成金でしょう。間違えて補助金と呼ばれる助成金もあるようです。

② 事業投資と人材投資の違い

補助金は基本的に事業への投資ですから経済産業省に対する事業計画・収支計画書を出します。投資を受けた後5年間は倒産なく、事業が成長できる事業内容と収支計画がそろっている必要があります。補助金は企業に対する金銭的救済措置ではなく、投資家(経済産業省)向けの計画ですから儲かっていれば審査で加点されますが、赤字であれば減点されます。一般的には直近2期が黒字で債務超過でないことが条件とされています。給付が最高1千万円ぐらいで助成金より高額なのが大きな違いです。
助成金は厚労省であれば雇用環境・雇用条件の改善や社員教育等人材への投資が目的で、「労働者」に対して何か施策を行う、というのが特徴です。金額は数十万円といったものが多いようです。

③ 補助金の採択率・補助率とは

助成金は予算がある限り条件がそろえばほぼ100%支給されますが、補助金の採択率は平均35%くらいといわれています。東京都の企業からの申請書のレベルが高いので地方の企業が不利にならないよう東京都は採択率が地方より低くなる措置が講じられています。地震、津波、大雨の被災地の都道府県は特例で採択率が高くなります。補助金の補助率は対象経費の1/2、2/3となっています。対象経費は公募要領で定められています(消費税は除く)。

④ 採択方法の違い

補助金は申請後審査、採点をし、点数の高い方から採択され、助成金は申請後の審査の後受付順で採択されます。補助金でもIT導入補助金や軽減税率対策補助金は先着順です。補助金は採択後対象経費を支払い、実施報告提出後清算払いされます。

ハローワークインターネットサービス をご存知ですか?

2019-12-18

ハローワークインターネットサービスとは

ハローワークインターネットサービス(以下「HWIS」)とは、ハローワーク(以下「HW」)に登録した求人情報を求職者がネット上で検索できるサービスのことです。全国のHWから求人情報が集められその件数は130万件弱にもなります。リクナビ等が1万件ほどといわれているのでその巨大さがお分かりになるでしょう。企業はこれを使わない手はありません。

HWISに求人を公開するには

HWが受け付けた求人のうち、HWISでインターネット上に公開される求人は、企業が公開を認めた案件に限ります。HWに登録されたすべての求人情報がHWISで公開されるわけではありません。HWISに求人を出すには、HWの窓口で求人を出すときに情報公開をするかのチェック欄で公開をするかどうかを決められます。
①公開することで営業の勧誘がある
②他社に賃金などの条件が漏洩する
③募集ポジションによっては秘密裏に動く必要がある
などの理由から公開しない企業がHW求人で1割ほどいるのですが、①②の場合は公開したほうがよいでしょう。PCでの閲覧を標準としており、スマホなどのモバイル端末では見づらいかもしれません。しかし、職業紹介事業者(Indeedなど)にもデータが供給されており、こうした事業者等が手掛けるスマホサイトでは快適に検索が可能です。リクルートによるとスマホなどネットでの求人検索は全体の6割に上るといわれています。ネットに公開することが求職者を集めるには絶対に必要でしょう。

HWISに情報が公開されるタイミングは

その日に登録された求人情報は夜9時ごろに集約、確定し翌朝6時ごろに最新情報に更新されます。つまり翌日になると情報が更新されます。HWは新規求人が上に出てきますが、この更新時期を応用して休み前に求人を出しておくと、新規求人として上に出続けるのでお勧めです。例えば金曜に登録すると翌日の土曜から月曜日まで最新求人として上に載ることになります。年末年始などはさらに長い期間になるでしょう。

求人は公開しよう/

求人はネットで公開するのが普通の時代になっています。よい人材をとるためにも求人情報は公開して、求職者の目に留まる確率を上げましょう

ハローワークの求人サイトが2020年 から新しく使いやすくなります!

2019-12-18

今までのハローワーク(HW)

人材の移動が激しくなっている昨今、民間求人サイトは求人側、求職側両社に使いやすいサービスに進歩してきました。HWは使いやすさの面に遅れがあり敬遠される傾向がありました(例えばHW窓口に行って所定の用紙に書き込んで求職するとか、HWに行って端末を見なければ出ていない求人情報がある等)。しかし、2020年から抜本的見直しをしたHW求人がスタートすると発表されています。

HW、どこが使いやすくなる?(会社の場合)

①会社においてHWIS(ハローワークインターネットサービス)を活用した求人ができるようになります。今まではHWISに求人情報を入力まではできましたが掲載は窓口まで行く必要がありました。②会社マイページから過去の募集求人を利用し簡便に求人ができ、求職者との連絡や採用、不採用の連絡ができるようになります。民間の求人サイトと同様の機能が実装されそうです。連絡機能が強化され求職者を逃さず採用できるでしょう。③求人情報等の充実(自社アピール機会が強化されます)「仕事の内容」や「固定残業代」などの求人を詳細に書き込めます。特に画像情報や会社からのメッセージ(社員からのメッセージ)が強化される予定です。会社の情報が強化されれば従来より求職者を採用できる環境に様変わりするでしょう。④これがすごい! 求職者へのリクエストができるようになります。求職者にもマイページが割り当てられそこに職歴やスキルといったことを書けるようになります。求職者のマイページ情報を見て民間求人にあるようなヘッドハント、直接スカウトができることになるようです。2021年までに実装予定です。

HW、どこが使いやすくなる?(求職中の場合)

①自宅からHWISを通じて求職ができるように。弱点だったHWまで足を運ばなければ見にくかった求人情報を自宅で見て、採用エントリーまでできるようになります。スマホファーストにもなるでしょう。②HW窓口情報とネット情報の求人の一元化も進められます。従来は一部表示情報に差異があり窓口でしか見られない情報がありました。③会社のスカウトがマイページに来ることになり、転職を考えている人の登録が増加するでしょう。

大きな転職市場になるかも

すべて実装されれば今までのHWとは別物になるでしょう。求職者の流入も予想され、なおかつ求人も無料。求人はHWが基本の時代が来るかもしれません。

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